元田事務所ニュース 2021年(令和3年) 10月号 TOPIC 2

 政策  助成金申請をテコに生産性向上と雇用確保を
「業務改善助成金」の活用法
令和3年8月より、「業務改善助成金」制度について、特例的な要件緩和・拡充が行われます。制度の内容を確認し、雇用の維持と生産性向上に向けて、自社の業務改善を検討しましょう。

●助成金改正の背景
 「業務改善助成金」は、事業場内で最も低い賃金(以下、事業場内最低賃金)を一定額以上引き上げ、生産性向上に役立つ設備投資などを行う中小企業・小規模事業者に対して、その費用の一部を助成する制度です。
 新型コロナウイルス感染症の影響により業況が厳しいなか、今年度の最低賃金引き上げに対する是非が取り沙汰されています。政府は、地域別最低賃金額改定の目安を全国一律28円とした上で、最低賃金については、早期に全国平均で時給1,000円とすることを目指しています。
「業務改善助成金」制度の要件緩和と拡充による特例措置は、助成金の積極的な活用を促して、生産性向上を支援することにより、最低賃金の引き上げを後押しする相乗効果を狙っています。

●対象と要件、助成率
 対象となるのは、①事業場内最低賃金と地域別最低賃金の差額が30円以内、②事業場規模100人以下の2要件を満たす事業場です。
 主な支給要件は、賃金引き上げ計画を策定し、事業場内最低賃金を一定額以上引き上げる旨を就業規則などに規定した上で、引き上げ後の賃金を支払うことです。また、生産性向上に資する設備投資を行うことなどにより業務改善を行い、その費用を支払うことが必要です。設備投資とは、機械設備やコンサルティングの導入、人材育成や教育訓練などを指します。この際、単なる経費削減や職場環境改善を目的とした経費、通常の事業活動に伴う経費は対象外となるので注意しましょう。その他、解雇、賃金引き下げなどの不交付事由がないことなどが挙げられています。
 助成率は、事業場内最低賃金が900円未満の場合は4/5、生産性要件を満たした場合は、9/10まで助成されます。生産性要件とは、直近の会計年度における生産性が、その3年度前と比較して、1~6%以上伸びている場合などが該当します。
 助成は、事業場内最低賃金の引き上げ額に応じたコース区分(20円、30円、45円、60円、90円)が設けられ、区分額以上に引き上げた場合に、生産性向上のための設備投資などにかかった費用に応じます。
 一方、事業場内最低賃金が900円以上の場合は3/4、生産性要件を満たした場合は4/5の助成率です。

●特例的な要件緩和・拡充
 対象となる全事業主に対する特例として、従来の事業場内最低賃金の引き上げ額区分に45円コースが増設され、使い勝手が向上しています。また、同一年度内に2回まで申請することが可能となりました。
 特に業況の厳しい事業主に対しては、賃金引き上げ対象者に関して、現行最大7人以上であったところ、各コースに最大10人以上のメニューが増設されました。増設に伴い、各コースごとに助成上限額が拡大され、90円コースで10人以上で600万円となります。対象は、事業場内最低賃金が900円未満の事業者に加え、コロナ禍により売上高など直近3ヶ月間の月平均値が前年または前々年比で30%以上減少した事業者です。
 更に設備投資の範囲拡充として、乗車定員11人以上の自動車および貨物自動車や、パソコン・スマホ・タブレットなどの端末および周辺機器を新規導入した場合も補助対象となりました。対象は、コロナ禍の影響を受けながらも、生産性向上に資する設備投資などを行い、事業場内最低賃金の引き上げ額を30円以上とした事業者です。

●助成金交付申請上の注意点
 助成金交付申請書の提出先は、都道府県労働局です。賃金引上計画に基づく事業場内最低賃金の引き上げは、交付申請書の提出後から事業完了期日内であれば、いつ実施しても問題はありません。一方、業務改善計画に基づく設備投資などは、助成金の交付決定通知書を受ける前に実施すると対象になりません。交付決定確認後に行いましょう。
 令和3年度の申請締切予定は、令和4年1月31日、事業完了期限は、同年3月31日です。予算を超える申請があった場合は申請期限内に募集が終了する場合があるので、早めに検討し対応していきましょう。