元田事務所ニュース 2021年(令和3年) 6月号 TOPIC 1

 政策  令和3年度の地方労働行政

運営方針にみる労働基準行政の重点事項

各都道府県労働局による労働施策を方向付ける、今年度の「地方労働行政運営方針」がこのほど策定・公表されました。非正規雇用者の再就職支援から女性や高齢者の活用、長時間労働の抑制やハラスメント対策まで、国の労働政策を遡及しつつ、ウィズコロナ、ポストコロナを見据えた内容になっています。

 厚生労働省では、毎年度、地方労働行政運営方針を策定・公表しています。これはその年度の労働行政を運営するにあたっての重点施策を示したものです。各都道府県労働局は、この運営方針を踏まえつつ、各局内の管内事情に即した重点課題や対応方針などを盛り込んだ行政運営方針を策定し、計画的な労働行政の運営を図ることとなります。したがって、運営方針から今年度、労働行政が何を重点事項として、事業所の監督・指導・支援などの行政活動を展開しようとしているのかを知ることもできます。
 ここでは、今年度の労務管理体制を整えるうえで、4月1日に公表された今年度の地方労働行政運営方針の主なポイントを確認しておきたいと思います。

●ウィズ・ポストコロナ時代の雇用機会の確保
(1)雇用の維持・継続に向けた支援
 新型コロナウィルス感染症の影響およびそのまん延防止措置により休業を余儀なくされた労働者の雇用の維持・継続のため、休業、教育訓練、出向を通じて雇用維持に取り組む事業主に雇用調整助成金により支援すること、および産業雇用安定助成金により、出向元と出向先の企業を支援し、在籍型出向を活用した雇用維持を促進することとしています。
(2)業種・地域・職種を越えた再就職等の促進
 新型コロナウイルス感染症の影響などによる求職者ニーズの多様化に対応するために、主に次のような支援等を行うこととしています。
ハローワークに就職支援専門の相談員(ナビゲーター)を配置。担当者制により再就職のためのキャリアコンサルティングなどの個別支援を行い、雇用ニーズの高い職種や分野への再就職支援推進の体制強化を図る。
東京・大阪などの大都市圈のハローワークに新たに専門の相談員を配置することなどにより、コロナ禍における地方への就職ニーズが高まることなどを見据えて業種、地域、職種を越えた再就職等も含めた個々のニーズに応じた支援を行う。
新型コロナウイルス感染症の影響により離職を余儀なくされ、これまで就労経験のない職業に就くことを希望する者の安定的な早期再就職支援を図るために一定期間試行雇用する事業主に対して試行雇用期間中の賃金の一部を助成する(トライアル雇用助成金)。
(3)非正規雇用労働者の再就職支援
 非正規雇用労働者や新規学卒者などの雇用の安定のために、職業訓練も含めたきめ細かな就労支援や定着策、職場情報等の見える化を促進する必要があるため、主に次のような取り組みをすることとしています。
ハローワークに専門の相談員を配置し、担当者制による求職者の個々の状況に応じた体系的かつ計画的な一貫した就職支援の強化を図る。
求職者等に向けた企業の職場情報の提供を行う職場情報総合サイト(しょくばらぼ)や職業情報提供サイト(日本版O-NET)の活用により職場情報・職業情報などの提供による求人・求職の効果的なマッチングを図る。さらには、中途採用にかかる情報公表を行い、中途採用者の増加や定着の促進等に取り組む事業主に助成金(中途採用等支援助成金)を支給し、中途採用の拡大を図る。
(4)高齢者の就労・社会参加の促進
 令和2年に改正され、本年4月1日から施行されている高年齢雇用安定法(高年齢者等の雇用の安定等に関する法律)により、65歳から70歳までの就業確保措置を構ずることが事業主の努力義務となりました。そこで、事業主への取組促進支援および65歳を超えて働くことを希望する高年齢求職者の再就職支援のために、70歳までの就業機会確保に向けて65歳を超える定年年齢の引き上げや継続雇用制度の導入等を行う企業、60歳から64歳までの高年齢労働者の処遇改善を行う企業に対して、65歳超雇用推進プランナーやアドバイザーによる提案型の相談・援助による支援などを行うこととしています。
(5)女性活躍・男性の育児休業取得の推進
 女性活躍推進法(女性の職業生活による活躍の推進に関する法律)が令和2年6月1日から施行(中小企業は令和4年4月1日から)されていますが、企業への周知徹底および男女問わずすべての労働者が仕事と家庭を両立しながらキャリア形成が進められるよう、主に次のような取り組みをすることとしています。
不妊治療のための休暇制度・両立支援制度の利用促進に取り組む中小企業事業主に対する助成金(働き方改革推進支援助成金)の支給要件に不妊治療のために特別休暇を導入した場合なども含めてその利用を促進し、不妊治療を受けやすい職場環境の整備を推進する。
女性活躍推進法の行動計画策定義務対象企業が101人以上に拡大(令和4年4月1日より)されることを踏まえ、中小企業事業主に対する女性活躍推進アドバイザーによる個別支援等を行う。

●ウィズコロナ時代に対応した労働環境の整備、生産性向上の推進
(1)「新たな日常」の下で柔軟な働き方がしやすい環境整備
 適正な労務環境下における良質なテレワークの普及促進を図るため、テレワーク相談センターによる働き方改革推進支援センターと連携した個別相談対応やセミナーの開催等により、テレワークを実施する中小企業への支援を充実することとしています。また、良質なテレワークを導入・実施し、人材確保や雇用管理改善の観点から効果をあげた事業主への支援を行うこととしています(人材確保等支援助成金の支給)。
(2)ウィズコロナ時代に安全で健康に働くことができる職場づくり
 職場における新型コロナウイルス感染症の拡大を防止するため、「取組の5つのポイント」や「職場における新型コロナウィルス感染症の拡大を防止するためのチェックリスト」等を活用した職場における感染防止対策の取り組みを推進するとしています。また、新型コロナウイルス感染症にかかる労災補償については、迅速かつ的確な調査および決定を行うこととしています。
(3)雇用形態に関わらない公正な待遇の確保
 雇用形態に関わらない公正な待遇の確保に向けて、働き方改革推進支援センターによるワンストップ窓口において、労務管理等の専門家による個別訪問支援等に加え、新たに業種別団体等に対し専門家チームによる支援を実施。また、賃金引き上げや非正規雇用労働者のキャリアアップを図るため、各種助成金の活用も含めた支援を行うこととしています。
(4)長時間労働の抑制に向けた監督指導等
 時間外・休日労働時間数が1か月あたり80時間を超えていると考えられる事業場および、長時間にわたる過重労働による過労死等に係る労災請求があった事業場に対しては監督指導を継続実施することとしています。また、年次有給休暇の取得促進に向けて年間5日取得の時季指定義務の周知徹底を図るとともに、時間単位年次有給休暇の導入促進を図ることとしています。

●総合的なハラスメント対策の推進
 令和4年4月1日から中小企業においてもパワーハラスメント防止措置が義務化されることもあり、職場におけるハラスメント撲滅のために事業主に対して周知啓発を実施するとともに、新型コロナウイルス感染症を理由とする職場のパワーハラスメント問題に関してワンストップで対応する相談体制の整備を図ることとしています。