元田事務所ニュース 2021年(令和3年) 5月号 TOPIC 2

 雇用  ポストコロナに向けて拡大の兆し
注目されるジョブ型雇用制度を考える
2020年、新型コロナウイルス感染症が拡大する中、新たな日常を通じた「フェーズⅡの働き方改革」の基本方針が閣議決定され、経団連もまた、日本型雇用制度の見直しと、ジョブ型雇用制度の拡大を提唱しています。社会変革の推進力として取り沙汰されているジョブ型雇用制度とは何なのか、今後の影響と導入する際の留意点について考えてみましょう。

●日本の雇用制度の特徴
 雇用制度は、大きくメンバーシップ型とジョブ型に区別されます。メンバーシップ型は、「人」を中心に管理を行い、職種や職務内容、勤務地などが限定されない雇用制度です。一方、ジョブ型は「仕事」に「人」を結びつけて管理を行う雇用制度です。
 日本には、新卒一括採用後に異動や配置転換などのジョブローテーションを行い、その会社独自の研修を通して、幅広い知識を持ち、柔軟に活用できる人材を育成するといった雇用慣行があります。中途採用が多い欧米諸国ではこのようなジョブ型が一般的ですが、日本ではメンバーシップ型が注流です。

●ジョブ型雇用制度推奨の背景
 少子高齢化が急速に進行し、労働力が減少するなか、2019年、働き方改革関連法が施行されました。ワークライフバランスが見直され、長時間労働の是正や育児・介護との両立支援、勤務地や職種、時間を限定した限定正社員の起用など、多様で柔軟な働き方が求められるようになりました。また2020年4月から「同一労働同一賃金」の導入により、雇用形態にかかわらない公正な待遇を必要とし、職務評価の価値が見直され始めました。
 2020年、新型コロナウイルスの感染拡大は、経営悪化による整理解雇や倒産といった事態を引き起こし、従来の我が国特有の終身雇用という安定神話の崩壊はさらに加速しています。感染防止対策のために在宅勤務が急速に浸透し、業務が見えない状況下、職務遂行能力を基準とする職能評価で適切な評価ができるのか疑問視され始めました。経済の再建が急務となるなか、雇用形態や時間、場所にとらわれず、求める人材をピンポイントで採用し、即戦力として雇用できるジョブ型雇用に焦点が当たったのです。

●ジョブ型雇用制度とは
 ジョブ型雇用では、まず職務や職務内容を明示した職務記述書を作成します。その内容に基づき、必要な人材を採用し雇用契約を結び、業務を遂行します。その特性として、採用におけるミスマッチを防ぎ、専門性に特化した育成に取り組むことができます。配置や登用に関しても、必要な職務に要件を満たした人材をつけることができ、職務に応じた報酬の明示は、公平性を担保することにもなります。
 また日本ではまだ認められていませんが、会社にとってはその職務が不要になった場合や能力不足と判断された場合は解雇することができるため、人件費を調整でき、労働者にとっては、スキルに対し報酬額が意に沿わない場合は転職することができます。人材の流動性が高くなる制度といえます。

●ジョブ型雇用制度導人の影響
 ジョブ型雇用制度の導入にあたっては、職務分析によりそれぞれの職務を明確に定義する必要があります。その上で、職務に応じた賃金を決定するために、職務の価値を明確にする分析と評価制度を構築しなければなりません。採用時や雇用中の人材が職務によりマネジメントされるため、自己研鑚による専門職としてのキャリアが重要となります。労働市場は競争力が高まり、結果、生産性の向上に繋がると考えられます。
 2021年には改正高年齢者雇用安定法の施行により、70歳までの就業機会の確保が企業の努力義務になりました。年功序列型で成長したシニア世代に多様な働き方の選択肢が与えられたことは、あらゆる世代にジョブ型雇用が適用可能であることを示唆しています。

●ジョブ型雇用導入の留意点
 ジョブ型雇用への移行は、日本の雇用慣行を根底から覆す大改革です。まずは専門職が求められる部署から職務分析を進め、必要な環境整備をすることが第一です。社内で移行内容を共有した上で、段階を踏んで評価制度や賃金制度を再構築し、ジョブ型雇用への移行を検討して新たな人材登用と働き方を模索してみてはいかがでしょうか。