元田事務所ニュース 2021年(令和3年) 3月号 TOPIC 1

 助成  新型コロナ感染症対応で在籍出向により従業員の雇用維持に取り組む場合
産業雇用安定助成金の活用と雇用維持支援
コロナ禍で仕事が激減している事業所がある一方で、コロナ禍が繁忙を招いている事業所もあります。両者間で人材を融通し、全体としての雇用を維持できる方策のひとつが「出向」。政府が新たな助成制度を整備したほか、マッチング・サービスも立ち上げました。

 厚生労働省は、新型コロナウイルス感染症拡大の影響で事業活動が一時的に縮小している事業者が、出向により労働者の雇用を維持する場合、出向元と出向先の双方の事業者に対して運営経費の一部を助成する「産業雇用安定助成金」(仮称)を創設することにしました。この助成金は、昨年12月15日に閣議決定された令和2年度第3次補正予算案に盛り込まれているものです。1月の通常国会で予算成立後、厚生労働省令の改正などを経て確定し、制度がスタートすることになります。詳細は、それをもって確認する必要があります。
 「産業雇用安定助成金」は、新型コロナウイルス感染症の影響により事業活動の一時的な縮小を余儀なくされた事業主が、その雇用している従業員(雇用保険の被保険者)を解雇したり雇い止めしたりすることなく、雇用を維持したまま他の企業に出向させた場合に、その出向元事業主および出向を受け入れた出向先事業主の双方に、出向に係る経費について一定期間につき助成するというものです。

●対象となる出向

 この助成金の対象となる出向とは、一時的な雇用調整措置であり、出向者が出向期間の終了後は出向元企業に戻って再び働くことが前提となります。したがって、出向元事業主は事業活動の回復に努め、出向者が戻れるような経営努力をしなければなりません。また、出向元企業と出向先企業が、親子会社やグループ会社の関係になく、資本的、経済的・組織的関連性などからみて独立性が認められるものでなければなりません。
 たとえば、コロナ禍にあって、観光業、飲食業、アパレル・ファッション業、航空業などは過剰人員となっていますが、医療・介護、宅配等物流業、IT・通信業などは人手不足となっています。このように新型コロナ感染症の影響により一時的に雇用過剰となった企業が従業員の雇用を維持するために、資本的、経済的・組織的関連性などのない人手不足の企業との間で、在籍出向により従業員をシェアすることが助成金の支給要件となります。
 なお、出向元企業で出向者の代わりに新たに労働者を雇い入れたり、出向先企業で出向者を受け入れるために雇用している労働者をさらに別の企業に出向させたり、辞めさせたり、出向元企業と出向先企業で従業員を交換して出向させるなどの玉突き雇用・出向となるものであってはなりません。

●助成内容

 支給される助成金には、出向運営経費に関するものと出向初期経費に関するものがあります。

【出向運営経費の助成】

 出向運営経費とは、出向元事業主および出向先事業主が負担する出向労働者の賃金、教育訓練および労務管理に関する調整経費など、出向者が出向期間中に要する費用の一部を助成するものです。具体的には表1のとおりです。
 例えば、出向者の賃金について、出向元事業主が「3000円/日」、出向先事業主が「8000円/日」を負担するという場合、双方が中小企業に該当し出向元事業主が雇用する従業員に対して解雇等を行っていないという場合は、その「9/10」が助成されるので、出向元事業主には2700円、出向先事業主には7200円か助成されることになります。

【出向初期経費の助成】

 就業規則や出向契約書の整備費用、出向元事業主が出向に際して出向元であらかじめ行う教育訓練、出向先事業主が出向者を受け入れるために用意する機器や備品などの出向に要する初期経費について、その一部を助成するものです。具体的には表2のとおりです。なお、加算は、出向元事業主(雇用過剰業種の企業や生産性指標要件が一定程度悪化した企業からの送り出)、または出向先事業主(異業種からの受け入れ)がそれぞれ一定の要件を満たす場合に支給されるものです。
 なお、助成対象となる経費は、出向開始日が21年1月1日以降の場合、出向開始日以降の出向運営経費および出向初期経費が助成対象に出向開始日が21年1月1日より前の場合は、1月以降の出向運営経費のみが助成対象となります。

●受給までの流れ

 この助成金は、出向する労働者に関する一部経費について、出向元事業者と出向先事業者が共同事業主として支給申請を行うことで、それぞれの事業者へ助成金が支給される制度です。申請手続きそのものは出向元事業者が行うことになります。
 なお、現行の雇用調整助成金にも雇用調整のために3カ月以上1年以内(緊急対応期間に開始したものは1カ月以上1年以内)、在籍出向により他の企業へ出向させた場合に出向元事業主に支給されますが、この場合にはいずれか一方の助成金を選択して受給することになります。

●産業雇用安定センターの活用

 一時期的な雇用調整のために従業員を出向させたくても、自社の努力だけでは出向先を見つけられないことも多くあります。このような場合には、公益財団法人産業雇用安定センターを活用することができます。産業雇用安定センター(全国47都道府県の県庁所在地に事務所を設置)では、新型コロナウイルス感染症の影響により一時的に雇用過剰となった企業が、従業員の雇用を維持するために、人手不足などの企業との間で「出向」を活用しようとする場合に、双方の企業に対して出向のマッチングを無料で行っています。