元田事務所ニュース 2021年(令和3年) 2月号 TOPIC 2

 福利厚生  新型コロナの労災認定基準
新型コロナウイルス感染症が労働災害となるケースと労災保険の請求
第三波ともいわれる新型コロナウイルスの感染拡大が続くなか、厚生労働省によると、新型コロナウイルス感染症に関する労災請求件数が、2020年12月18日時点で2562件と月を追うごとに増加しています。新型コロナウイルス感染症の労災補償における取り扱いについて、そのポイントを押さえておきましょう。

●労働災害と労災保険給付

 労災保険とは、業務上の事由または通勤による労働者の負傷・疾病・障害または死亡(以下、傷病等)に対して、労働者やその遺族のために必要な給付を行う制度です。
 労働災害が発生した場合は、労働基準監督署の認定を受けることにより、労災保険給付の支給対象となります。労災認定を受けると、療養(補償)給付により治療費は全額労災保険から支給されます。
 また休業した場合は、休業(補償)給付等により、一定期間、最大で賃金の8割を受給することができます。その他、障害(補償)給付や遺族(補償)給付など、手厚い補償が備わっています。

●労働災害の認定基準の緩和

 傷病等が業務上災害として労災の認定を受けるには、その傷病等について業務の遂行中に業務に内在する危険が具現化したと認められる、「業務遂行匪」と「業務起因性」という2つの要件が求められます。
 厚生労働省は通達により、新型コロナウイルス感染症に関しては、「感染拡大のリスクがあるという特性を鑑みて、当分の間調査により感染経路が特定されなくても、業務により感染した蓋然性が高く、業務に起因したものと認められる場合は労災保険給付の対象とすること」とし、業務との相当因果関係の判断を柔軟に対応しています。

●職種による労災認定の基準

 新型コロナウイルス感染症にかかる労働災害の認定は、個別の事案ごとに、業務の実情や一般生活状況を調査のうえ、業務との関連性が判断されます。
 医師、看護師、介護従事者などの医療従事者等については、業務外で感染したことが明らかな場合を除き、原則として労災保険給付の対象になります。
 医療従事者等以外の労働者については、同時期に複数の同僚労働者の感染が確認され、クラスターが発生したと認められるなど、感染経路が特定される場合は、感染源が業務に内在していることが明らかであるとして、労災給付の対象になります。
 一方、感染経路が特定されない場合においても、「感染リスクが相対的に高いと考えられる業務に従事し、業務により感染した蓋然性が高いものと認められる場合は、労災保険給付の対象となる」とされています。
 感染リスクが相対的に高いと考えられる業務とは、①「複数の感染者が確認された労働環境下」と、②「顧客等との近接や接触の機会が多い労働環境下」における業務です。いずれも私生活における感染リスクが低いことを前提に、①では発症前の14日間に、本人を含め職場内で2人以上の感染が確認された環境下を指します。具体的には、他の労働者との会話の機会における飛沫感染を否定できない場合などが挙げられています。②では、接客中や密閉された空間での飛沫感染や接触感染が考えられる環境下を指し、具体的には、小売業の販売業務やバス・タクシー等の運送業務、育児サービス業務等が挙げられています。

●労災保険加入義務の再確認

 労災保険は、パートやアルバイトを含む労働者を一人でも雇用していれば、業種や規模にかかわらず加入する義務があり、保険料は全額事業主が納付しなければなりません。必要な届け出を行わず、労働災害が発生し労災保険給付を受けた場合は、保険料の遡及徴収に加え、保険給付に要した費用の全額または一部を徴収されることもあります。不測の事態に備え、再確認しておくことが大切です。