元田事務所ニュース 2021年(令和3年) 2月号 TOPIC 1

 法律  中小企業に2021年4月適用に備えて

最新判例にみる「同一労働同一賃金」と対応のポイント(2)

今月は先月に引き続き、同一労働・同一賃金に関する最近の判例の主なポイントを紹介します。先月は賞与や退職金でしたが、今月は諸手当や休暇に関する最高裁の判断です。

●諸手当、病気休暇に関して(日本郵便<東京>事件)

 この事件は、時給制契約社員(有期労働契約)らが正社員(無期労働契約)との間で、年末年始勤務手当、病気休暇等に相違があることは労働契約法第20条違反であると主張して、会社に対し、不法行為に基づく損害賠償を求めるなどの請求をしたものです。
 原審(東京高裁)は、比較対象労働者を正社員一般職としたうえで、年末年始勤務手当、私傷病による病気休暇(正社員は有給、契約社員は無給)などの相違については、いずれも労働契約法第20条に違反し不合理であるとして、これらに係る損害賠償請求の一部を認めました。夏期および冬期休暇の付与の有無に関する労働条件の相違については、同条にいう不合理と認められるものに当たるとしながらも、損害が生じたとはいえないとして、これに係る損害賠償請求は棄却しました。
 これに対して最高裁では、正社員と時給制契約社員との間の「職務内容」「職務内容および配置の変更の範囲」「その他の事情」を考慮して、次のように判断しました。
<年末年始勤務手当>
 年末年始勤務手当は、正社員に対して年末年始の期間(12月29日~翌年1月3日)の勤務した日について(年末は1日4000円、年始は1日5000円など)が支給され、時給制契約社員には支給されませんでした。これについて判決では、①年末年始勤務手当の性質は、郵便業務の最繁忙期で、多くの労働者が休日として過ごしている期間に業務に従事したことに対して、その勤務の特殊性から支給されているものであること、②正社員が従事した業務の内容やその難易度にかかわらず、その期間に勤務したこと自体を支給要件としているものであり、支給額も一律であることなどから、同じ郵便業務を担当する時給制契約社員に労働条件の相違があることは不合理であり、時給制契約社員にも支給するのが妥当であると判断されました。
<病気休暇>
 病気休暇は、正社員に対して、私傷病等により勤務日または正規の勤務期間中に勤務できない者に引き続き90日間まで有給で与えられ、時給制契約社員には年間10日の範囲で無給でした。これについて判決では、病気休暇は私傷病により勤務ができなくなった郵便業務を担当する正社員に有給で与えられているのは、正社員が長期にわたり継続勤務することが期待されることから、その生活保障を図り、私傷病の療養に専念させることを通じて、その継続的な雇用の確保を目的としているものであると判断しました。そのうえで、同じ郵便業務を担当する時給制契約社員についても、有期労働契約の更新を繰り返して勤務する者がいるなど相応の継続勤務が見込まれるのであれば、病気休暇の日数の相違はともかく、有給・無給の相違は不合理であると判断しています。
 なお、夏期・冬期休暇等の相違についても争われてれていますが、次に述べる佐賀事件と同様の内容での判決となっています。

●夏期・冬期休暇に関して(日本郵便<佐賀>事件)

 この事件は、時給制契約社員(有期労働契約)らが正社員(無期労働契約)との間で、夏期・冬期休暇等の相違について労働契約法第20条違反であると主張して、会社に対し、不法行為に基づく損害賠償を求めるなどの請求をしたものです。
 原審(福岡高裁)は、夏期および冬期休暇の付与に関して、正社員には与えられるが、時給制契約社員には与えられないとする労働条件の相違について、労働契約法第20条に反するとして、休暇日数分の賃金に相当する額の損害賠償請求を認めました。
 これに対して最高裁では、次の①~③などの理由により、正社員と時給制契約社員の間に「職務の内容」「職務の内容及び配置の変更の範囲」「その他の事情」に相応の相違があることを考慮しても、差があることは不合理であり時給制契約社員にも、夏期・冬期休暇を与えるべきが妥当であると判断しました。
 ①夏期・冬期休暇の目的は、郵便業務を担当する正社員に対して年次有給休暇や病気休暇等とは別に労働から離れる機会を与えることにより、心身の回復を図ることにあること、②夏期・冬期休暇の取得の可否や取得し得る日数は正社員の勤続期間の長さに応じて定まるとされていないこと、③郵便業務を担当する時給制契約社員は、契約期間が6カ月以内とされるなど、繁忙期に限定された短期間の勤務ではなく、業務の繁閑に関わらない勤務が見込まれていること

●扶養手当・祝日給に関して(日本郵便<大阪>事件)

 この事件は、時給制および月給制契約社員(有期労働契約)が、正社員(無期労働契約)との間で、扶養手当、祝日給等の相違について、労働契約法第20条違反であると主張して、会社に対し、不法行為に基づく損害賠償を求めるなどの請求をしたものです。
 原審(大阪高裁)は、扶養手当について、正社員にはあるが時給制および月給制契約社員にはないとする労働条件の相違については不合理とは認められないとして損害賠償請求を棄却しました。しかし、年始期間の勤務に対する祝日給(祝日を除く1月1日~3日)に関して正社員には支給されるが、時給制および月給制契約社員には支給されないとする労働条件の相違については、有期労働契約期間が通算5年を超えるものに限り、労働契約法第20条に反するとして損害賠償請求を認めました。
 これに対して、最高裁では、正社員と時給制および月給契約社員との間の「職務内容」「職務内容および配置の変更の範囲」「その他の事情」を考慮して、次のように判断しました。
<扶養手当>
 扶養手当の目的に照らせば、正社員が長期にわたり継続して勤務することが期待されることから、その生活保障や福利厚生を図り、扶養親族のある者の生活設計等を容易にさせることを通じて、その継続的な雇用を図るものである。その目的に照らして、契約社員についても、扶養親族があり、かつ、有期雇用契約の更新を繰り返すなど相応に継続的な勤務が見込まれるのであれば、扶養手当を支給する趣旨は妥当であると判断しました。
<祝日給>
 年始期間の祝日給の目的は、正社員には特別休暇が与えられることとされているにもかかわらず、最繁忙期であるために年始期間に勤務しかことについて、その代償として、通常勤務に対する賃金に所定の割増をし加算して支給するものである。時給制および月給制契約社員も契約更新を繰り返して勤務することもあるなど、繁忙期に限定された短期間の勤務ではなく、業務の繁閑に関わらない勤務が見込まれている。これらのことなどから、職務内容や変更の範囲その他の事情に相応の相違があることなどを考慮しても、正社員の年始期間の祝日給に対応する祝日割増賃金を支給しないという労働条件の相違は不合理であると判断しました。