元田事務所ニュース 2020年(令和2年) 11月号 TOPIC 2

政策 少子化対策のための労務関連の諸施策
労働・社会保険から見た少子化に対処するための施策
~第4次少子化社会対策大綱より
2020年5月、少子化社会対策基本法に基づく総合的かつ長期的な少子化に対処するための施策の指針について、第4次の大綱が閣議決定されました。少子化の進行は、人口の減少と高齢化を通じて社会経済に多大な影響を及ぼしており、更に新型コロナウイルス感染症の流行は結婚、妊娠・出産、子育ての当事者に多大な影響を与えています。安心して子供を産み育てることのできる社会への施策を、労働・社会保険の見地から読み解きます。

●少子化の現状

 2019年、合計特殊出生率は1.36となり、前年に比べ0.06ポイント低下しました。出生数が過去最少を記録するなか、一人でも多くの若い世代の結婚や出産の希望をかなえる「希望出生率1.8」の実現が目標に掲げられました。
 少子化の主な原因は、未婚化・晩婚化と有配偶出生率の低下。その背景には依然として、非正規雇用労働者の増加に伴う経済的な不安定さや、共働き世帯が増加することによる仕事と子育ての両立の難しさなど様々な要因があります。結婚、妊娠・出産、子育てに希望を持つことができる環境づくりは急務の課題です。

●具体的施策1

 経済的基盤の安定のための具体的施策として、①不本意非正規雇用労働者のハローワークなどにおける正社員化支援、②公的職業訓練および人材開発支援助成金をはじめとする各種助成金の活用促進、③非正規雇用労働者の不合理な待遇差など処遇改善を徹底し、正規雇用労働者への転換に向けた取り組みを推進することなどが挙げられています。

●具体的施策2

 妊娠・出産に関する支援の拡充として、①不妊治療に関する情報提供や相談体制の強化、費用に対する助成および仕事と両立するための職場環境の整備、②妊婦健診の公費負担や出産育児一時金および産前産後休業期間中の出産手当金、社会保険料免除などによる経済的負担の軽減、③マタニティハラスメントの防止に対する指導の徹底などが挙げられています。

●具体的施策3

 雇用環境の整備については、2017年の改正育児・介護休業法における有期雇用労働者の育児休業取得の要件緩和の周知、また育児・子育て中の短時間勤務、所定外労働の免除、子の看護休暇など両立支援制度について周知徹底を図るとしています。また、そうした制度を利用しやすい職場環境を整えるため、事業主に対する助言や助成などの支援を進めることが挙げられています。
 このほか、男性の育児休業取得や育児参画を促進するため、育児休業分割取得の検討や「パパ・ママ・育休プラス」などの制度の周知と定着を図り、男性の家事・育児に関して、普及啓発や意識改革を行うとしています。

●具体的施策4

 子育てに関する経済的支援については、多子世帯や子供の年齢、所得水準に応じた児童手当の支給対象拡大の検討を行い、高等学校等就学支援金などにより教育費負担の軽減を図るとしています。

●具体的施策5

 働き方改革と暮らし方改革としては、長時間労働の是正および年次有給休暇の取得促進に向けての取り組みを徹底し、仕事と生活の調和(ワーク・ライフ・バランス)への取り組みとして、①多様な正社員制度の導入・普及、②テレワークの推進、③転勤に関する雇用管理の周知、④時間単位の年次有給休暇制度の導入促進などを掲げています。
 少子化に対処するための施策は、働き方や家族の在り方そのものに変化を促すとても重要な取り組みです。労働者一人ひとりの人生設計に目を向けた、優しい労働・社会環境が実現されることは、一個人を雇用する事業主に与えられた新たな課題といっても過言ではないでしょう。