元田事務所ニュース 2019年(令和元年) 11月号 TOPIC 2

 年金  年金改革
財政検証結果報告

5年ごとに行われる年金の給付と負担のバランスを取るための「財政検証」の結果が、このほど社会保障審議会年金部会から発表になりました。経済成長、労働参加、被用者保険の適用範囲などさまざまな変数を用いて検討しています。その骨格を見ていきます。

 2019年8月27日に厚生労働省社会保障審議会年金部会から「2019年財政検証結果」が公表されました。
 将来の公的年金制度の財政の見通しと今後の年金の支払額を検証したものです。
 2004年(平成16年)の年金制度改正では、将来の現役世代の負担が重くなりすぎないよう、保険料水準の上限を固定したうえでの保険料の引き上げ、国の負担割合増、積立金の活用で公的年金財政の収入を決めました。
 この収入の範囲内で給付を行うため、その時の社会情勢(現役人口の減少や平均余命の伸び)に合わせて、年金の給付水準を自動的に調整する仕組み「マクロ経済スライド」を導入しました。5年に1度行う財政検証で、年金額の伸びの調整を行う期間(調整期間)を見通しています。
 その結果、2019年度の所得代替率は「(夫婦2人の基礎年金13万+夫の厚生年金9万)/現役男子の平均手取り収入額35.7万」で計算され61.7%となっています。
 今回の公表内容は、①将来の所得代替率と調整終了時の試算②オプション試算という2つの試算から、年金財政の健全性を検証しています。

1.将来の所得代替率と調整終了時試算について
 ここでは、「経済成長」と「労働参加」という2つの変数の組み合わせから、大きく3つの試算がなされています。
①経済成長と労働参加が進むケースでは、マクロ経済スライド終了時の所得代替率は、51.9% (2046年度)~50.8% (2047年度)の見通しです。
②経済成長と労働参加が一定程度進むケースでは、マクロ経済スライド終了時は2044年度で所得代替率は50.0%になっていますが、機械的に給付水準調整を進めた場合、給付水準終了は2053年度~2058年度となり、所得代替率は46.5%~44.5%になるとしています。
③経済成長と労働参加が進まないケースでは、給付水準調整終了は2043年度で、所得代替率は50.0%になります。機械的に給付水準調整を進めると2052年度に国民年金の積立金がなくなり完全賦課方式に移行します。その後、保険料と国庫負担で賄うことができる給付水準は、所得代替率38%~36%程度になるとしています。

2.オプション試算について
 オプション試算とは、将来世代の給付水準の底上げのためにどのような制度改正をすればよいか試算するものです。改革の方向性を探るうえで注目されるものですが、次の2つの観点から試算を行っています。
①被用者保険のさらなる適用拡大
 被用者保険の適用対象の拡大を大きく3つのパターンに分けて試算しています。
ⅰ 被用者保険の適用対象となる現行の企業規模要件を廃止した場合。
ⅱ 被用者保険の適用対象となる現行の賃金要件、企業規模要件を廃止した場合。
ⅲ 一定の賃金収入(月5.8万円以上)があるすべての被用者へ適用拡大した場合。
 ⅰ~ⅲへと、厚生年金の適用を拡大するほど、所得代替率は上昇します。
②保険料拠出期間の延長と受給開始時期の選択
ⅰ 基礎年金の拠出期間を延長する場合(現行の40年を45年に拡大)
ⅱ 65歳以上の在職老齢年金の仕組みを緩和・廃止した場合
ⅲ 厚生年金の加入年齢の上限を延長した場合(現行の70歳を75歳に拡大)
ⅳ 就労延長と受給開始時期の選択肢を拡大する場合(給付水準がどれだけ上昇するかを試算)
ⅴ 就労延長と受給開始時期の選択肢の拡大(上記のⅳにⅰ~ⅲの制度改正を加味し、給付水準がどれだけ上昇するかを試算)
 これらさまざまな試算を通してわかるのは、年金財政の健全化のために今後、どのような働き方を個人や社会が選択していくのか、それに伴い保険料の拠出期間や受給開始時期をどうするかなどを議論、検討する必要があるということです。