元田事務所ニュース 2019年(令和元年) 10月号 TOPIC 2

 行政  厚生労働省の検討会が報告書を提出
副業・兼業の場合の労働時間管理のあり方
副業・兼業に対する関心が高まるなか、厚生労働省は2019年8月に「副業・兼業の場合の労働時間管理の在り方に関する検討会」の報告書を公表しました。労働時間管理、健康管理の対応策について、基本的な考え方を示しています。

 社会全体として、実効性のある労働時間管理を求める声が強くなってきています。今回は副業・兼業の場合の時間管理について、この検討会報告が求めている管理のあり方を見ていきます。
 現行法の下では、労働時間に関しては、本業と副業・兼業の両方の事業所で雇用されている場合、労働時間は通算します。その結果、一般的には、法定労働時間を超えて労働させる使用者が時間外労働の上限規制の適用を受け、割増賃金を支払わなければなりません。しかし、本業と副業・兼業それぞれの労働契約の内容である所定労働時間を合算して法定労働時間(8時間)となる場合は、所定労働時間を超えて労働させる使用者が時間外労働の上限規制の適用を受けおよび割増賃金を支払わなければなりません。
 また、兼業・副業に伴う労働者の通算した労働時間による事業者間の健康管理上の問題に関しては、労働安全衛生法上に位置付けられていません。
 これらの問題に関して報告書の要旨をまとめてみます。

1.労働時間管理等
(1)上限規制について
 複数の事業場の労働時間を日々厳密に管理することは、企業にとって、非常に困難な場合があります。
 たとえば、①労働者の自己申告を前提に、日々単位ではなく、月単位などの長い期間で、副業・兼業の上限時間を設定し、各事業主の下での労働時間をあらかじめ設定した時間内で収める。②労働者自身が、月の総労働時間を管理して上限近くになったら、各事業主に申告する。これらの方法で総労働時間を調整することが考えられます。
(2)割増賃金について
 他の事業場における労働時間を日々把握することは困難です。そのことを前提に、労働者からの自己申告をもとに労働時間を合算して、割増賃金を支払いやすく、かつ時間外労働時間の抑制効果も期待できる管理の方法を検討することが考えられます。たとえば、使用者の予見可能性のある他の事業主の下での週単位、月単位などの所定労働時間のみ通算して割増賃金支払いを義務づける。各事業主の下で、法定労働時間を超えた場合のみ割増賃金の支払いを義務づける、などです。他の事業主の下での労働時間の把握方法については、労働者のプライバシーへの配慮や、人事管理における実務上の実行可能性を考えると、労働者の自己申告が基本になると考えられます。
 副業・兼業の事実のみ申告をし、労働時間の申告を拒む場合はどうするのか、申告にどの程度の客観性を求めるのかなどの問題は、引き続き検討をしていく必要があるとしています。

2.健康管理について
 事業者は、副業・兼業をしている労働者について、労働時間を自己申告により把握し、通算した労働時間の状況などを勘案して、当該労働者との面談、労働時間の短縮その他の健康確保のための措置を講ずるよう配慮しなければならないとしています(公法上の責務)。事業者は、通算した労働時間の状況について、休憩時間を除き1週間当たり40時間を超えている時間が1月当たり80時間を超える場合は、労働時間の短縮措置などを講ずるほか、自らの事業場における措置だけで対応が困難な場合は、副業・兼業先との相談その他の適切な措置が求められます。また、医師の面接指導その他の適切な措置、ストレスチェック制度等、現行の健康確保措置の枠組みの中に当該労働者を何らかの形で組み込むことも必要です。
 今後も、労働者の健康保険や企業の予見性にも配慮した、副業・兼業の場合の実効性のある労働時間管理のあり方について、労働審議会において引き続き積極的に議論が行われることとなっており、次の取りまとめが待たれるところです。