元田事務所ニュース 2018年(平成30年)7月号 TOPIC 1

課題 パワハラを受けた経験者は実に3人に1人
職場のパワーハラスメントとその防止対策の取り組み

職場でパワーハラスメント(パワハラ)を受けた経験がある人が増えています。
こうしたなか、働き方改革においてもその対策が議論されています。
パワハラの定義や企業に求められる取り組みとは。

 厚生労働省が公表した「平成遜年度職場のパワーハラスメントに関する実態調査」の結果によれば、過去3年間にパワーハラスメントを受けた経験があると回答した人の比率は32.5%(約3人に1人)と、平成24年度の実態調査の25.3%(約4人に1人)よりも増加しています。これに対して、相談窓口の設置などにより予防・解決に向けた取り組みを実施している企業の割合も増え、5割を超えています(52.2%)。
 去る3月30日、厚生労働省の「第10回職場のパワーハラスメント防止対策についての検討会」(座長:佐藤博樹・中央大学大学院教授)は、実効性のある職場のパワーハラスメント防止対策を盛り込んだ報告書を公表しました。
 この検討会では、昨年3月に策定された「働き方改革実行計画」において、「職場のパワーハラスメント防止を強化するため、政府は労使関係者を交えた場で対策の検討を行う」とされたことを踏まえ、平成29年5月から議論が重ねられてきました。
 今後は、今回まとめられた報告書を踏まえ、労働政策審議会において議論、検討が進められ、厚生労働省において所要の措置が講じられる見込みです。

パワハラの定義と三要素
 現在、職場のパワーハラスメントに対する法律的な定義はありません。平成23年度の「職場のいじめ・嫌がらせ問題に関する円卓会議」の提言において、職場のパワーハラスメントを「同じ職場で働く者に対して、職務上の地位や人間関係などの職場内の優位性を背景に、業務の適正な範囲を超えて、精神的・身体的苦痛を与える又は職場環境を悪化させる行為」と定義し、裁判例や個別労働関係紛争処理事案に基づき、6類型を典型例として整理しました。


 なお、今回の検討会では、前述の定義をもとに、パワハラに当たる基準を次の3つの要素をすべて満たすものとして、より具体的に整理しました。

①優越的な関係に基づいて(優位性を背景に)行われること
②業務の適正な範囲を超えて行われること
③身体的もしくは精神的な苦痛を与えること、または就業環境を害すること

 ここでいう「優位性」とは、人間関係や専門知識などさまざまな優位性が含まれる趣旨とされ、上司や部下に限らず、先輩・後輩間や同僚間、部下から上司に対して行われるものも含まれるとのことです。
 また、「業務の適正な範囲を超える」とは、社会通念に照らして、当該行為が明らかに業務上必要のないもの、業務の目的を大きく逸脱しているものなどをいいます。

相談窓口の設置など防止対策を強化
 職場のパワーハラスメントの防止対策については、現在は企業などにおける自主的な取り組みを促していますが、より実効性の高い取り組みを進めるために、報告書では、次のような規定の創設や施策の実施が示されています。

①行為者の刑事責任、民事責任
②事業主に対する損害賠償請求の根拠の規定
③事業主に対する措置義務
④事業主による一定の対応措置をガイドラインで明示
⑤社会機運の醸成

 今後、労働政策審議会でさらに検討を重ねていくことになります。報告書では、事業主に対する措置義務として、セクハラや妊娠・出産・育児などに関するハラスメント対策の例を参考に、事業主に職場のパワーハラスメント防止などのための雇用管理上の措置を義務付け、違反があった場合の行政機関による指導などについて法律に規定することで、個々の職場で、パワハラが起きない環境を整備することが望ましいとしています。
 なお、「平成28年度職場のパワーハラスメントに関する実態調査」の結果によれば、現状おいて、パワーハラスメントの予防・解決のための効果が高い取り組みとしては相談窓口の設置(82.9%)や管理職研修(63.4%)や従業員向けの研修(41.2%)の実施を挙げている企業の比率が高く、企業がパワハラの予防・解決に向けた取り組みを複数実施することが、従業員にとって、職場環境の改善などの効果を感じやすいという結果となっています。