元田事務所ニュース 2017年8月号 4面・5面 参考資料


平成28年度「個別労働紛争解決制度」の施行状況
「パワハラ」関係相談、5年連続でトップに

 このほど厚生労働省は、労働者と企業とのトラブルを、裁判に持ち込むことなく迅速に解決する「個別労働紛争解決制度」の平成28年度の施行状況を公表しました。
 それによると、「民事上の個別労働紛争」に関する相談件数は25万5,460件で、前年度に比べて4.2%増加。相談内容として、パワーハラスメント(以下「パワハラ」と表記)を含む「いじめ・嫌がらせ」が同6.5%増の7万917件と、5年連続で最多となっています。

総合労働相談の状況
 労働問題に関するあらゆる相談にワンストップで対応するため、都道府県労働局、労働基準監督署内等に設置されている総合労働相談コーナーに平成28年度1年間に寄せられた相談件数は、前年度比9.3%増の113万741件であった。
 このなかで、労働関係法上の違反を伴わない「民事上の個別労働紛争」に関する相談件数は同4.2%増の25万5,460件。このうち、労働者からが21万845件(82.5%)と大半を占め、事業主からは2万5,500件(10.0%)であった。
【相談内容】
 民事上の個別労働紛争の相談内容は、「いじめ・嫌がらせ」に関するものが7万917件(22.8%)で最も多く、次いで、「自己都合退職」が4万364件(13.0%)、「解雇」が3万6,760件(11.8%)、「労働条件の引下げ」が2万7,723件(8.9%)と続いている。

都道府県労働局長による助言・指導
 労働局長に助言・指導を申し出た件数は前年度比0.6%増の8,976件。このうち、労働者からの申し出が8,930件(99.5%)と大半を占め、事業主からは46件(0.5%)であった。
【助言・指導の申し出の内容】
 助言・指導の申し出の内容は、「いじめ・嫌がらせ」に関するものが2,206件(22.3%)で最も多く、次いで、「解雇」が1,022件(10.3%)、「自己都合退職」が948件(9.6%)、「労働条件の引下げ」が877件(8.9%)と続いている。
【助言・指導の実施状況】
 助言・指導が実施されたものは8,539件(95.8%)、申し出が取り下げられたものは270件(3.0%)、処理が打ち切られたものは86件(1.0%)となった。

《いじめ・嫌がらせ(上司からの暴言等)に係る助言・指導の例》
 正社員として勤務しているが、上司から「ぼけ、アホ」、「のろま」、「お前は使いものにならん」等の暴言を日常的に受けることに加え、後ろから腰を蹴られ転倒するという暴行を受けた。上司は、周りに気付かれないようにこのような行為をしているため、会社に言ってもどうしようもない。このため、職場環境の改善を求め、その上司とは別の部署に異動したいとして、助言・指導を申し出たケース。
 事業主に対し、上司の行為はパワハラの提 言で示されている類型「身体的な攻撃及び精神的な攻撃」に該当する可能性があり、会社の責任が問われる可能性があることから、パワハラの有無について調査し必要な対応を行うこと、上司とは別の部署に異動したいという申出人の意向を踏まえた話し合い等の対応をとるよう助言した。
 その結果、申出人はその上司とは別の部署へ異動。また、社内でパワハラの有無について調査が進められることになった。

紛争調整委員会によるあっせん
 労働問題の専門家である弁護士、大学教授等からなる紛争調整委員会にあっせんを申請した件数は前年度比7.3%増の5,123件。このうち、労働者からの申請が5,034件(98.3%)と大半を占め、事業主からは80件(1.6%)、労使双方からは9件(0.2%)であった。
【あっせん申請の内容】
 あっせん申請の内容は、「いじめ・嫌がらせ」に関するものが1,643件(29.0%)で最も多く、次いで、「解雇」が1,242件(21.9%)、「雇止め」が472件(8.3%)、「労働条件の引下げ」が445件(7.9%)と続いている。
【あっせんの実施状況】
 合意が成立したものは2,003件(39.4%)、申請人の都合により取り下げられたものは222件(4.4%)、紛争当事者の一方が不参加等の理由により、あっせんが打ち切られたものは2,847件(56.0%)となった。

《解雇に係るあっせんの例》
 試用期間1ヵ月のパート労働者として勤務を開始したが、勤務開始当初から体調を崩し、数日間欠勤したところ、勤務開始5日目に、体調管理ができていないとの理由で解雇された。復職はかなわないと考えているが、インフルエンザに罹患するなどやむを得ない事情により欠勤したものであり、補償金として8万円の支払いを求めたいとしてあっせんを申請したケース。
 双方の主張を聞いたところ、会社側は、試用期間中であること等の理由により解雇の正当性を主張した。
 これを受けて、会社側に対し、試用期間は1ヵ月間とされている以上、その期間を通じ労働者の適性を見極めるべきであり、その期間に満たない時期の解雇は裁判となった場合に問題視される可能性があること等を伝え、歩み寄りを促したところ、解決金として5万円を支払うことで合意が成立し、解決した。