元田事務所ニュース 2016年09月号 6面 労務管理

トラブル回避の対応術
届出が遅れた家族手当の支給をさかのぼらなくてもよいか

 当社では扶養する家族がいる従業員に対して、届出により毎月一定額の家族手当を支給していますが、このほど、再婚した男性従業員から、婚姻日から3ヵ月を過ぎて届出がありました。
 家族手当をさかのぼって支給してもよいのですが、扶養家族の異動については速やかに届け出ることを義務とする就業規則の定めもあります。家族手当の支給、変更の時期については規則に定めていませんので、この場合、さかのぼって支給せず、申出があった月から支給することでも問題はありませんか?


「賃金」としての家族手当の支払い義務
 一般的に家族手当は、就業規則や賃金規程で支給基準や金額を定めます。この場合、労働基準法においては、家族手当も労働の対償として支払われる賃金と位置づけられますので、支給基準を満たせば、使用者には支払い義務が生ずることになります。
 家族手当の支給基準は、対象となる家族の続柄、同居・扶養の事実、さらには年齢の範囲などを定めることが考えられますが、支給(または金額の変更)の条件として、従業員本人が所定の届出をすることを定めておくこともできます。本人の届出を条件として定めていなければ、一般的には支給基準を満たせば当然に支払い義務が生ずることにはなります。

支給開始時期の問題
 ところが、質問のケースのように、届出を条件としていたとしても、届出が相当程度遅れた場合に、基準を満たした日を起点として支給を開始するのか、または、届出があった日を起点として支給を開始するのか、明確にされていない場合には疑義が生じてしまいます。
 就業規則などで扶養家族の異動の速やかな届出を義務づけているのであれば、届出が遅れたことで、家族手当の支給も遅れるのは自己責任とする考え方もあるでしょう。
 一方で、支給基準を満たせば当然に手当を受ける権利が発生していて、届出は単に請求をする行為に過ぎないという考え方もあります。なお、労働基準法(第115条)においては賃金に関する請求権は2年間の時効にかかると定められていますので、2年まではさかのぼって請求が可能であるとされています。

疑義を生じないために
 いずれにしても1、質問のケースでは結論は出せませんが、少なくともこのような疑義が生じないためには、就業規則などに、家族手当の取り扱いを支給の開始時期も含めて定めておくことが必要で、今後は届出が遅れないように注意を喚起することなども大切だといえます。