元田事務所ニュース 2016年06月号 4面~5面 参考資料

16年版中小企業白書

災害時への備え、中小は不十分


 2016年版の「中小企業白書」では、最近の中小企業の動向について分析を行い、売上高の伸び悩みや人手不足、設備の老朽化といった中小企業が直面している課題を浮き彫りにしています。
 また、災害時などへの対応策をまとめた「事業継続計画」(BCP)を策定済みの中小企業がわずか15%にとどまることに着目。自然災害が後を絶たない我が国において、早めの計画策定の重要性を強調しています。
※同白書は複数の省庁の調査等を基に構成されていますが、紙面の都合上、それらの表記を割愛しています。

中小企業の収益の状況
 景況調査の採算(経常利益)DI※をみると、リーマン・ショックの影響もあり、2008年から09年第1四半期にかけて大幅に低下したが、以降は上昇傾向にある。
※採算DIは、前年同期に比べて、採算が「好転」と答えた企業の割合から、「悪化」と答えた企業の割合を引いたもの。
 経常利益の実額についても、2013年以降は増加傾向にあり、15年10-12月期は過去最高水準となった。

収益構造の分解
 経常利益は、売上高、変動費(原材料、仕入品等の売上高に比例する費用)、人件費、減価償却費(建物や設備等の固定資産の費用)、営業外損益(企業の財務活動等によって発生する損益)の5つの要因に分解することができる。
 これらのうち、過去最高水準の経常利益に最も大きく寄与している項目は変動費の減少(経常利益が最も落ち込んだ09年に比べて+1.7兆円)、次は人件費の減少(同+1.6兆円)で、売上高は減少している(同▲0.9兆円)。
 これにより、売上高は伸び悩んだが、変動費や人件費が減少したことで、経常利益を増加させていることが分かる。

中小企業の経営上の問題
 卸売業・小売業・サービス業について、中小企業の経営上の問題点を景況調査により確認すると、どの業種も「需要の停滞」が上位に位置しており、他にも、卸売業は「販売単価の低下・上昇難」、小売業は「大・中型店の進出による競争の激化」等、売上高の伸び悩みへと直結する課題を経営上の問題としてあげている事業者も多い。(下図参照)

人手不足
従業者が1~29人の企業で働く雇用者数は減少傾向にあり、ここ20年で約212万人の減少となった。
 他方で規模の大きな企業で働く雇用者数は増加しており、従業者500人以上の企業で働く雇用者数は過去20年で約313万人増加した。

減価償却費(設備投資)の分析
 減価償却費について、関連する設備投資の動向をみていく。
 実際の設備投資額の推移を確認すると、2008年から10年初旬にかけて減少傾向にあったが、以降はほぼ横ばいで推移。15年にはやや増加しているものの、リーマン・ショック前の水準には達していない。
 中小企業が設備投資をしない理由として、現状設備で十分という理由が68%で最も多く、次いで景気の先行き不透明、借入負担が大きい、と続いている。
 また、最後に設備投資を実施した時期を聞くと、全体の約4割が5年以上設備投資を実施しておらず、2割弱が10年以上実施していない。結果として設備の老朽化という課題が顕在化してきている。

変動費の分析(取引環境)
 変動費は売上高の変動によって変動する曹用であり、製造業であれば材料費、小売業であれば仕入価格の変動等に左右される。
 関連の深い一次産品(エネルギー、金属等)価格は変動が大きいため、その変動に応じて販売価格に適切に転嫁できるかどうかが経常利益に影響する。
 過去10年間で価格単価を引き上げできなかった場合の対応として、「利益率の圧縮」を行ったと回答した企業が53.9%で最も多く、以下、「人件費の抑制」、「他の原材料・仕入価格の抑制」、「設備投資の抑制」などと続いている。

事業継続計画(BCP)の策定
 従来から自然災害の脅威にさらされている我が国においては、リスク管理の重要性が増している。
 BCPとは企業が自然災害等の緊急事態に遭遇した場合に、事業資産の損害を最小限にとどめつつ、中核となる事業の継続あるいは早期復旧を可能とするために、平常時に行うべき活動や緊急時における事業継続のための方法、手段等を取り決めておく計画のことである。
 中小企業におけるBCPの策定状況をみると、「策定済み」の企業は15.5%にとどまり、BCP策定への取組は不十分であるといえる。(下図参照)
 自然災害が多く、企業を取り巻く環境の変化により多様なリスクが想定される我が国においては、今後もリスクへの対応をより強固にしていくことが重要である。
 経営者は、BCPを特別なものであると認識せずに、雇用・人材育成や事業承継と同様に、企業の経営の一環として積極的に対応していくことが求められる。