元田事務所ニュース 2016年05月号 6面 労務管理

トラブル回避の対応術
会社秘密を漏らした社員を懲戒解雇できるか?

 当社は省エネ関連の製品開発事業を行っている会社ですが、このほど社員が当社の営業上の重要な秘密情報を、会社のパソコンを通じて外に漏らしていたことが判明しました。
 本人は故意ではないと言っていますが、通常の操作では漏れない対策をしていたことや、秘密情報ファイルに何度もアクセスしていた証拠などの状況から、本人が意図的に漏らしたと考えられます。
 この社員を就業規則に基づいて懲戒解雇することは問題ないでしょうか?



秘密保持の義務
 今日の企業活動では、様々な情報をコンピューター上でデータとして蓄積し、データのやり取りなどもインターネットを介して行うことが通常となりました。このようなことから、企業が扱う秘密情報が漏洩(ろうえい)するリスクも高まり、漏洩した場合には重大な影響を及ぼすことも考えられます。
 このため、多くの企業では、誓約書や就業規則などで企業秘密の保持を労働者に義務づけ、この秘密保持義務に違反したときには懲戒処分をすることができる旨を規定しています。
 労働者が保持するべき営業上の秘密に該当するのか否かについては、不正競争防止法が参考になります。同法では、「営業秘密」について、「秘密として管理されている」「生産方法、販売方法その他の事業活動に有用な技術上又は営業上の情報であって」「公然と知られていないもの」と定義づけられています。
 こうした営業秘密を不正に利益を得る目的や保有者に損害を加える目的で使用し、または開示する行為が不正競争だとされ、使用者はそのような開示・使用行為について、在職中および退職後でも、差止、損害賠償および信用回復措置の請求などを行えることが規定されています。


懲戒処分の相当性
 質問のケースは、秘密情報を漏洩した従業員を懲戒解雇にできるかについてですが、労働契約法(第15条)においては、「懲戒に係る労働者の行為の性質及び態様その他の事情に照らして、客観的に合理的な理由を欠き、社会通念上相当であると認められない場合は、その権利を濫用したものとして、当該懲戒は、無効とする。」という定めがあります。
 したがって、懲戒処分の検討をする場合には、まずは、秘密情報の内容、重要度、漏洩の動機や目的、漏洩によって被る被害の程度、さらには秘密情報の管理体制や注意喚起が十分であったかなども考慮することが重要となるでしょう。
 まして、懲戒解雇は最も重い処分ですので、漏洩した行為が就業規則上の懲戒解雇の事由にあたるかどうか、その行為が他の処分では不十分であって解雇処分に相当するものかどうかを慎重に判断し、懲戒解雇とする場合でも、本人に弁明の機会を与えるなど適正な手続きを経ていることも必要となるでしょう。