暑中お見舞い申し上げます  2015年8月号


1面 表紙
《改正労働者派遣法、今国会で成立する見通し》 
   派遣期間制限の仕組みの見直しや派遣先の労働者との均衡待遇確保のための措置を強化

2面 ニュース
《平成26年度「過労死等の労災補償状況」》
   精神障害の労災請求件数および労災認定件数ともに過去最多
《平成26年度雇用均等基本調査(速報版)》
   女性の育児休業取得率は女性が86.6%、男性が2.30%でともに上昇
《個別労働紛争解決制度の平成26年度施行状況を公表》
   民事上の相談のうち「いじめ・嫌がらせ」が6万件を超え3年連続で最多
《東京労働局に設置された過重労働撲滅特別対策班(通称「かとく」)》
   違法な時間外労働をさせていたとして、特別対策班の発足以降初めて会社役員などを書類送検

3面 安全・労働衛生
《ストレスチェックと精神保健福祉士》
   ストレスチェックが実施できる資格を持つ精神保健福祉士の定義や仕事内容について解説

4面~5面 参考資料
《個別労働関係紛争の90%以上が金銭により解決》
   個々の労働者と事業主との間で生じる紛争(個別労働関係紛争)の解決状況調査結果の概要
    制度利用期間(棒グラフ)
    解決内容(円グラフ)
    金銭解決の金額の分布(棒グラフ)

6面 労務管理
《トラブル回避の対応術》
   パート従業員が妊娠、産休は取らせなければならないか?

7面 社会保険
《社会保険の実務サポート》
   マイナンバー制度の導入に伴う事業者の対応について

8面 参考資料
《事業所の8割が労使関係を「安定的」と認識》
   労使間の意思疎通に関する平成26年度の「労使コミュニケーション調査」の概要
    労使関係についての認識別事業所割合(表)


 通常国会に提出されている改正労働者派遣 法案が6月19日に衆議院で可決、7月8日 には参議院での審議が始まりました。会期が 大幅に延長されているため、改正法案は今の 通常国会で成立する見通しとなりました。成 立すれば、今年9月1日から施行されること になります。  現行制度では、派遣ができる期間について、 ソフトウェア開発など政令で定めた専門業務 については制限がなく、その他の業務には原 則で最長3年の制限がありますが、同改正法 案ではこの仕組みを廃止したうえで、新しく 以下の制度が設けられます。 ①事業所単位の期間制限・派遣先の同一の事  業所における派遣労働者の受入れは3年を  上限とする。それを超えて受け入れるため  には、事業所の過半数労働組合(それがな  い事業所においては労働者の過半数代表者)  からの意見聴取などが必要 ②個人単位の期間制限・一派遣先の同-の組織  単位(課)における同一の派遣労働者の受  入れは3年を上限  これにより、専門業務を含めて原則3年の 期間制限が適用されますが、同一業務であって も、派遣労働者の交代によリ3年 を超えての派遣が可能になります。  また、派遣元に対しては、派遣 期間終了時において、①派遣先へ の直接雇用の依頼、②新たな派遣 先の提供、③派遣元での無期雇用、 ④その他安定した雇用の継続を図 るために必要な措置の実施が義務 づけられます。(1年以上3年未満 は努力義務、3年経過時は義務)  このほか、派遣元と派遣先双方 において、派遣労働者と派遣先の 労働者の均衡待遇確保のための措 置を強化することが盛り込まれて いますが、これを受けて、同じ仕 事をする派遣労働者と通常の労働 者(正社員)との賃金格差を解消 することを目的とした、いわゆる 「同一労働・同一賃金」を推進する 法案も6月19日、衆議院で与党な どの賛成多数により可決し、参議 院へ送られています。            (次ぺージへ続く)


 しかし、審議において、法文のうち、「職務 に応じた待遇の均等」とされていた部分が 「業務の内容及び当該業務に伴う責任の程度 その他の事情に応じた均等な待遇及び均衡の とれた待遇」へと変更され、必要となる法制 上の措置も「施行後1年以内に」を「3年以 内に」としたうえで、「必要があると認める とき」と改められるなど、法律の実効性が問 われるような修正が加えられました。  厚生労働省はこのほど、平成26年度の「過 労死等の労災補償状況」をまとめました。  過重な仕事が原因で発症した脳・心臓疾患 の労災請求件数は763件で、前年度と比べ21 件(2.7%)減少。一方、仕事による強いスト レスなどが原因で発症した精神障害の労災請 求件数は1,456件で、同47件(3.3%)増加し ました。このうち、労災認定されたのは497 件と同61件(14.0%)増加し、請求件数およ び認定件数はともに過去最多となっています。  また、精神障害の労災補償状況を年齢別に みると、請求件数、認定件数ともに40歳代 (454件、140件)が最も多く、次いで30歳代、 20歳代の順となっています。  厚生労働省がまとめた「平成26年度雇用 均等基本調査(速報版)」によると、昨年10月 1日現在、女性の育児休業取得率は86.6% で前年度調査より3.6ポイント上昇。一方、 男性は2.30%で、同0.27ポイント上昇して います。  また、男性の育児休業取得率について産業 別にみると、「生活関連サービス業、娯楽業」 が10.35%で突出して高く、続いて「運輸業、 郵便業」3.59%、「医療、福祉」3.52%の順に なっています。  厚生労働省はこのほど、労働者と事業主と のトラブルを、裁判に持ち込むことなく迅速 に解決するための「個別労働紛争解決制度」 の平成26年度の施行状況を公表しました。  それによると、「総合労働相談コーナー」 に寄せられた相談件数が7年連続で100万件 を超え、このうち、民事上の個別労働紛争の 相談件数を内容別にみると、「いじめ・嫌がら せ」が62,191件と、続く「解雇」の38,966件、 「自己都合退職」の34,626件を大きく引き離 し、3年連続で最多となりました。  東京労働局に設置された過重労働撲滅特別 対策班(通称「かとく」)は7月2日、全国に 展開する靴の販売店の運営会社が従業員に違 法な時間外労働をさせていたとして、同社の 労務担当取締役と店舗責任者2人について、 労働基準法違反の疑いで東京地検に書類送検 しました。  同社は、過去にも複数の店舗で労働基準監 督署長の是正指導を受けていたにもかかわら ず、東京都内の2つの店舗で、従業員に事前 に労使協定で取り決めた残業時間を大幅に超 える残業をさせるなど、違法な行為を続けて いました。  特別対策班は、違法な長時間労働などを取 り締まるため今年4月に発足した組織で、書類 送検を行うのは今回が初めてということです。


 労働安全衛生法が改正されて、本年12月1日 から、ストレスチェックの実施が従業員数 50人以上の事業場に義務づけられています。 ところで、このストレスチェックを実施でき る者すなわちストレスチェック実施者は、医 師、保健師、看護師、精神保健福祉士である ことが必要とされています。  この中で、精神保健福祉士は一般にはあま り馴染みがないと思われます。そこで今回は、 このストレスチェック実施者に入った精神保 健福祉士について見てみようと思います。  精神保健福祉士は、平成9年に制定された 精神保健福祉士法により定められた精神保健 福祉領域のソーシャルワーカーの国家資格で す。精神科ソーシャルワーカーということで、 PSWと略称されることもあります。  法に定められた定義では、「厚生労働省に 備える精神保健福祉士登録簿の登録を受け、 精神保健福祉士の名称を用いて、精神障害者 の保健及び福祉に関する専門的知識及び技術 をもって、精神科病院その他の医療施設にお いて精神障害の医療を受け、又は精神障害者 の社会復帰の促進を図ることを目的とする施 設を利用している者の地域相談支援の利用に 関する相談そ の他の社会復 帰に関する相 談に応じ、助 言、指導、日 常生活への適 応のために必 要な訓練その  他の援助を行うことを業とする者」とされて  います。 ①医療機関  医療機関での業務は、精神科病院などで、 精神障害の医療を受けている人たちの相談を 受けたり、助言、指導、支援を行ったりする こと等がその職務となっています。 ②生活支援サービス  その設置日的によって行う業務にも幅があ り、日常生活訓練をする事業所、就労前訓練 や作業を行う目的の施設、相談支援事業所や 地域活動支援センター等の地域生活の支援を 主目的とする事業所等で、その目的に応じた 各種サービスを提供します。 ③福祉行政機関  行政機関では、法律に基づいた各種支援事 業や手続きの実施を担うほか、精神保健福祉 に係る計画立案に関与し、また精神障害者の 生活支援のために、関係機関のネットワーク を作るコーディネートなどの企画、実施、調 整なども担当します。 ④近年広がった職域  以上の他、近年広がった職域として、保護 観察所や矯正施設などの司法施設、社会福祉 協議会、ハローワーク、介護保険関連施設、 教育機関、一般企業等があります。  ストレスチェックも精神保健福祉士の新し い職域分野に位置づけられることになると思 います。現在、精神保健福祉士の登録者数は 約7万人ということですが、ストレスチェッ ク制度のスムーズな運営のためには、精神保 健福祉士の協力が不可欠であると言えます。


 解雇や労働条件の引き下げといった問題を めぐり、個々の労働者と事業主との間で生じ る紛争(個別労働関係紛争)については、都 道府県労働局や裁判所で解決を図ることがで きます。-方で、解決結果の実態については、 裁判所で判決が出されるケースを除いて非公 開であるため、必ずしも明らかではありませ んでした。  こうしたことから、厚生労働省は、労働紛 争の解決手段として活用されている「都道府 県労働局のあっせん」、「労働審判の調停・審 判」及び「民事訴訟の和解」について、事例 の分析・整理を独立行政法人労働政策研究・ 研修機構に依頼。このほどその調査結果を公 表しました。  それによると、あっせん・労働審判・和解 ともに、9割以上が企業側が労働者側に金銭 を支払って解決に至ったことが分かりました。  なお、調査対象事案は以下のとおりです。 *都道府県労働局のあっせん事案(以下「あ っせん」):2012年度に4労働局で受理され た個別労働関係紛争事案853件 *労働審判の調停・審判事案(以下「労働審 判」):2013年に4地方裁判所で調停または 審判で終結した労働審判事案452件 *匡妻訴訟の和解妻妾(以下「和解l):2013 年に4地方裁判所で和解で終結した労働 関係民事訴訟事案193件  あっせんでは、男性に係る案件が457 件(53.6%)、女性に係る案件が396件 (46.4%)と男性が若干多い。  労働審判では男性に係る案件が310件 (68.6%)、女性に係る案件が142件(31.4 %)と、あっせんよりも男性の比率が高く、 男性が3分の2以上を占めた。  この傾向は裁判上の和解ではさらに強まり、 男性に係る案件が149件(77.2%)、女性に 係る案件が44件(22.8%)と、男性が4分の 3以上を占め、女性は2割強となった。  あっせんでは、正社員402件(47.1%)、 非正規325件(38.1%)、派遣64件(7.5%) であった。  労働審判ではあっせんに比べて正社員の比 率が大きく高まり、342件(75.7%)と4分 の3以上が正社員で、非正規は95件(21.0 %)と2割強にとどまり、派遣は僅か13件 (2.9%)となった。  この傾向は裁判上の和解ではさらに強くな り、正社員が154件(79.8%)と8割に迫り、 非正規は37件(19.2%)と2割を下回った。   あっせんに係る期間(あっせん申請受理日  から合意成立によるあっせん終了日までの期  間)は、1~2カ月未満が60.8%と圧倒的に  多く、1カ月未満の19.8%を含めれば、8割以  上が2カ月以内に手続が終了している。


 一方、労働審判に係る期間(労 働審判の申立日から調停または審 判による終了日までの期間)は、 2~3カ月未満が43.4%と半数に 近く、あっせんよりも若干時間が かかっているが、それでもほとん どが6カ月以内に手続が終了して いる。  これに対し最終的に和解で解決 した訴訟は手続自体にかなり長い 期間を要しており、1年以上が40.9 %と最も多く、次いで6~12カ月未満の34.7 %で、訴訟を起こせばかなりの長期間となる という傾向は明確に存在している。  あっせんについては、終了区分が「合意成 立」である324件のうち、合意内容が金銭解 決であるのは313件で96.6%に上る。撤回・ 取消、すなわち復職と考えられる解決に合意 したものは4件、1.2%に過ぎない。  労働審判についても、金銭解決が434件、 96.0%と大半を占め、裁判上の和解について は、金銭解決が174件、90.2%とやや少な く、その分撤回・取消が12件、6.2%とやや 増えている。(右上図参照)  あっせんにおける解決金額の分布(下図参照) を見ると、10~20万円未満に3割近くが集 中しており、10万円未満が4分の1強に上る ことも含めると、過半数が20万円未満で解 決しているという結果になる。  平均値は27万9,681円だが、これは高額 の解決金に引っ張られているためで、中央値 は15万6,400円で、半分近くは15万円以下 で解決している。  これに対し、労働審判における解決金額は 50~100万円未満と100~200万円未満に 半分以上が集中し、さらに200~300万円未 満と300~500万円未満にそれぞれ1割前 後分布している。  平均値は229万7,119円、中央値は110万 円で、半分以上が100万円以上で解決してお り、あっせんとは明確に異なっている。  裁判上の和解については、50万円から1,000 万円に至るまでなだらかに分布しており、高 額の解決が頻繁に見られる。  平均値は450万7,660円、中央値は230万 1,357円で、総じて労働審判における解決金 額の2倍ほどの額で解決している。


 当社はパートタイマーを数名雇用し ていますが、このほどある女性パート が妊娠し、産休を取りたい希望のよう です。1年契約で更新して3年目に入 り、来月が更新の時期となります。  パートは貴重な戦力なので、契約を 更新して産休を取らせても良いのです が、代わりのパートを採用しなければ ならず、このまま契約満了で退職も仕 方ないかとも考えています。  このような場合でも、産休を取らせ なければならないのでしょうか?  男女雇用機会均等法(第9条)では、その 雇用する女性労働者が妊娠、出産したことな どを理由として、その女性労働者に対して解 雇、その他の不利益な扱いをすることを禁止 しています。この条文は正社員だけではなく、 パート、アルバイト、派遣労働者にも適用さ れます。  均等法に違反する場合には、罰則の適用も 含めて行政による厳しい措置の対象になりま す。厚生労働省は、原則として妊娠・出産な どから1年以内に女性が不利益な取り扱いを 受けた場合は、直ちに違法と判断することを 明確に示していて、是正指導や勧告に従わな い企業名を公表することなども含めて、この 判断基準に基づく指導などを徹底するとして います。  また、最近では、働く女性が妊娠・出産を きっかけに、会社から不利益な扱いを受ける ほかに、職場において精神的・肉体的な嫌が らせを受けることも含めて、マタニティー・ ハラスメント(マタハラ)という言葉が認知 されつつあります。  政府は、来年の通常国会での法改正も視野 に、企業にマタハラ防止対策の強化を促すた めの取り組みを実施する方針を打ち出すなど、 規制強化に向けた動きが活発になっています。  質問のケースのように、雇用契約期間を定 めたパートタイマーに関しても、妊娠や出産 をきっかけとして不利益な扱いをすることは、 たとえ本人が一定の理解を示していたとして も、法的には違反行為と認められることにな ります。妊娠したからといって契約の更新を しないことや退職を促すこと、減給や不利益 な人事評価なども行ってはならないとされて います。  パートタイマーであっても法令に基づいた 産前・産後休業など、女性労働者に対する就 業上の制度は適用されます。もともと、妊娠 の事実がなければ契約を更新する予定だった のであれば、更新して所定の休業をさせるよ うにしなければなちないでしょう。  また、均等法(第12条・13条)においては、 雇用する女性労働者が、妊娠・出産に関して 保健指導または健康診査を受けるために必要 な時間を確保することや、主治医などから指 導を受けた場合は、その指導事項を守ること ができるよう必要な措置を取ることが義務づ けられています。したがって、本人からこう した申し出などがあれば、勤務時間の状況や 本人の希望なども踏まえて対応することが必 要となるでしょう。